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栄養ニューズPEN

栄養ニューズ「PEN」2026年6月号

◆第41回日本栄養治療学会学術集会開催
 シンポジウム01
「栄養治療におけるイノベーション」

  • 当事者研究を取り入れた栄養治療:東京女子医科大学病院の若林秀隆先生は、精神疾患患者で行われている当事者研究の手法 を紹介し、栄養治療でも当事者である患者の意 向を反映させる仕組みが必要とした。具体的には、患者が考えるベスト体重をゴールとするなど、NSTに患者が参加する方向性などを示した。
  • 骨レジリエンス指数を用いた骨強度評価とオ ステオサルコペニア管理における低栄養対策のイノベーション :野上厚生総合病院整形外科/脆弱性骨折 治療センターの松本卓二先生は、JSPEN2026シンポジウムにおいて、骨粗鬆症診療の新たな評価軸としてBone Resilience Index(BRI:骨レジリエンス指数)を提示し、これを起点としたオステオサルコペニアおよび低栄養対策の実装可能性について報告した。骨量と骨質を統合して骨 強度を可視化するBRIは、骨折予防のみならず、低栄養やサルコペニアの高リスク者を拾い上げる 実践的指標として期待される。さらに、骨・筋・栄 養を別々にではなく一体として捉える診療の重要性が示され、高齢者医療における新たな評価と介 入の起点として注目された。
  • 栄養スクリーニングツールMUSTは急性期脳梗塞患者において嚥下障害と栄養関連合併症の予測に有用である:仙台市立病院 栄養管理科の佐々木麻友先生は、脳卒中患者の栄養スクリーニングとして普及しているMUSTについて、栄養関連アウトカムを検討し、急性期脳梗塞患者を対象に、MUSTと予後の関連を検討したところ、MUST2点以上で嚥下障害と感染症の発症率が有意に高く、入院期間の延長との関連が認められたことを報告し、MUSTのスクリーニングツールとしての有用性を訴えた。
  • NST専従薬剤師の活動が栄養治療の質に与える影響:熊本リハビリテーション病院 サルコペニア・低栄養研究センター/熊本リハビリテーション病院NSTの松本彩加先生は、栄養治療における薬剤師の関わりについて、薬剤師のNST専従配置によって起きた変化を報告した。結果として、NST薬剤師回診件数や介入患者数、経口栄養へ移行できた患者数が増加し、栄養治療の最適化とともにNSTが専門知識を有する機動的な集団へと昇華され、薬剤師の専従配置がイノベーションとなった経緯を報告した。
  • ZEROで開かれる未来~無痛胃瘻チューブ交換~:淡海医療センターの島本和巳先生は、バンパー型の胃瘻チューブは交換時に患者の苦痛が大きく、患者だけでなく医療従事者の負担になっていたとして、交換時の負担を軽減する新しい胃瘻チューブ「ZERO」の使用について報告。ほぼ無痛での交換が可能になったと述べた。
  • 腕時計型末梢ルート事故抜去防止デバイス(Freedo®)による末梢ルート事故抜去予防の前向き観察研究:国際医療福祉大学病院の相馬恵理子先生は、診療報酬改定で身体拘束の最小化が示される中、末梢点滴ルートの事故抜去防止との両立が困難である臨床の課題を示し、事故抜去リスクが高い患者に事故抜去防止デバイス「Freedo」を使用したところ、事故抜去がなくなったと報告した。
  • エネルギー密度とデータベースに基づく客観的食事設計とイノベーション:同志社女子大学の奥村仙示先生は、食品のエネルギー密度の概念を説明し、若年者や高齢者で密度を変える意義を述べた。さらに低エネルギー密度食の「デンシエット」の開発・販売について触れ、今後は高齢者向けに少量で多くのエネルギーを摂取できる「デンシエットplus(仮)」の開発や、3Dフードプリンターを活用して見た目がよくおいしい高齢者食を目指していると述べた。
  • 近赤外分光法を用いた簡易型体組成分析装置「FITTO」の栄養評価における可能性:医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部/桜十字先端リハビリテーションセンターの宇野 勲先生は、重要な栄養指 標である筋肉量評価の機材は大型かつ高価で、簡便な測定法は精度に課題があると指摘。小型で簡便に測定できる分析装置「FITTO」を紹介し、BIAやDXAとの相関も高いと報告した。
  • 化学療法を行う切除不能膵癌患者に対する成分栄養剤による栄養療法の有効性:無作為化比較試験:岐阜大学医学部附属病院 第一内科の上村真也先生は、膵癌患者は栄養障害を高頻度で認め、予後に大きく関与することを指摘した。そこで、化学療法を行う切除不能膵癌患者に対してエレンタール®を用いた栄養療法を実施した結果、体重、BMI、筋力の維持に加え、OSの延長が認められたことを報告した。
  • 膵癌術前補助療法中の膵酵素補充療法の有用性に関する検討:大阪国際がんセンター 消化器外科の福 田泰也先生は、膵癌に対して術前補助療法の導入が提唱されている一方で、治療中の栄養状態 悪化が課題であると指摘した。膵癌では膵外分泌機能不全が栄養不良の一因と考えられており、術前補助療法中にパンクレリパーゼを用いた膵 酵素補充療法を行ったところ、特に膵頭部癌にお いて栄養状態の維持に有用である可能性が示されたと報告した。

◆第29回日本病態栄養学会年次学術集会開催
 シンポジウム8
「プレシジョン栄養学の現在と展望」

  • 臨床現場でのエネルギー必要量の求め方の現在と展望:岐東北大学大学院医工学研究科スポーツ 健康科学分野の山田陽介先生は、高精度でエネルギー消費量測定が可能な「二重標識水法」 の普及と課題について解説した。日常生活の拘束もない優れた手法だが、高価な試薬や分析イ ンフラの不足が課題とし、現在取り組んでいる分析費用を大幅に抑えるプロトコルについて述べた。また精密な測定を支える重要な土台としての国際データベースの構築についても触れた。推定必要エネルギー量は年齢や体格による個人差が大きく、従来の体重あたり「30kcal/kg」ではエネルギーの過不足が生じやすい。この一律基準に対し、プレシジョン栄養学による個人の代謝特性を考慮した精緻な評価が不可欠、と結んだ。
  • 化学療法を行う切除不能膵癌患者に対する成分栄養剤による栄養療法の有効性:無作為化比較試験:岐阜大学医学部附属病院 第一内科の上村真也先生は、膵癌患者は栄養障害を高頻度で認め、予後に大きく関与することを指摘した。そこで、化学療法を行う切除不能膵癌患者に対してエレンタール®を用いた栄養療法を実施した結果、体重、BMI、筋力の維持に加え、OSの延長が認められたことを報告した。
  • 食事をはかること=プレシジョン栄養学の土台:栄養バイオマーカーと比較した自己申告型食事調査法の精度:信州大学医学部附属病院 臨床栄養部の髙岡友哉先生は、栄養指導の起点となる「食事評価」について、自己申告型調査法では、24時間蓄尿法などの客観的指標と比較してナトリウム摂取量の場合、「過少申告(実際の摂取量より少なく申告すること)」が生ずることをメタ解析の結果で示した。また栄養素の摂取量には日間変動による測定誤差も大きいと指摘。精度の高い栄養素摂取量の把握には複数日の調査期間が必要とし、正確な食事評価がプレシジョン栄養学の土台であり、管理栄養士は、調査手法の限界とその測定誤差を正しく理解し、自分が対象者の栄養素摂取量をどの程度測定できているかの自覚が必要、とした。
  • デジタルを活用した食事療法~リアルワールドで広がる個別化栄養の可能性~:株式会社おいしい健康 プロダクト開発チームの小田部あかり先生は、食事管理アプリのログを活用した、リアルワールドにおける個別化栄養の可能性について述べた。アプリから得られる「リアルライフデータ」の解析により、患者の潜在的な嗜好や「過度な糖質制限への誤 解」などの生活・心理因子の可視化、臨床研究で確認されたHbA1cの改善や減量効果などについて報告した。アプリの開発にはAIによるパーソナライズと、継続を支える「楽しさ・美味し さ」といった内的動機の掛け合わせが重要とし、日常生活に根ざしたプレシジョン栄養の実装の今後についても触れた。
  • プレシジョン栄養学―データ駆動型個別化栄養学―と時間栄養学の実践プラットフォームの構築:名古屋文理大学 健康生活学部の小田裕 昭先生は、プレシジョン栄養学についてアウトカム指向かつデータ駆動型である点が従来のアプローチと180度違う点とした。さらにゲノムや腸内細菌の解析などによる体質解析の最新情報を提示し、体内時計が生み出す生体リズムの重要性にも触れた。特に食事のタイミングが体内時計をリセットする点や、入浴が代謝に与える好影響への注目を促した。一方、栄養状態改善の介入方法の遅れも指摘し、生成AIによる献立作成の現在や、ゲーミフィケーションによって健康行動が誘発される今後の社会インフラの構築について展望を述べた。
  • ディスカッション:小見出し・消化吸収の個人差とデータからの逆算/・食事摂取基準の課題と個別化の必要性/・社会実装に向けた技術と生活背景の統合/・管理栄養士の新たな役割と未来展望

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